アーティストについて

Goh Uozumiは,アートによる歴史的なパラダイムシフトへの介入をミッションとして,人間以外の知性や存在を視野に入れたアルゴリズムベースの方法論による,時代を超えた独自の批評性をもつ作品をつくっています.そのコンセプトは,アートとテクノロジーや社会システムの動向を貫く核心的なもので,例えば暗号通貨監視社会自律分散ネットワークシステム新しい造形理論などがあります.これまで主に,YCAMやICC,メディア芸術祭などの主要なMediaArt機関で作品を発表しています.また,ブロックチェーンなどを組み込んだ次世代のミュージアムの技術基盤をつくる「Whole Museums」を立ち上げ,研究開発を行っています.

彼は2014年以来,活動の焦点を暗号通貨(仮想通貨のこと)に当て,「TRUSTLESS」と呼ぶコンセプトをもとにした作品やプロジェクトを展開しています.その主な作品は、新しい社会秩序の起源としての暗号通貨の存在を可視化する「New Order/Siren Call?」や,人工知能が自律的に国家をつくる「空の国家 – State of Empty」(両作とも2016年,ICC),そして両作の起点となった,未来の人工システムの記憶を呼び出す「Trustless Trust / Mk.God」2015年、InstitutFrancais / Zinc / SecondNature)などです.

New Order / Siren Call? , 2016
空の国家 -State of Empty , 2016

Trustless Trust / Mk.God , 2015

彼のそれらの作品は,「TRUSTLESS」を芸術のコンセプトとして確立させるためにつくられました.TRUSTLESS は,信頼を技術的にアルゴリズムに委託することを意味し,ビットコインなどの暗号通貨のコミュニティでしばしば使われる“Trustless”という語をもとにしています.信頼とは,今世紀まで人間が独占的に運用してきた自然の性質の一種です.しかし今日の人間の文明は,知性や契約,労働や信頼などの自動化を推し進めています.そういった文明の動向を踏まえて,彼は「TRUSTLESS はあらゆる自動化ムーヴメントを貫く軸となる」という思想を唱えています.
彼の TRUSTLESS やアート&暗号通貨の考えについては,「現代思想 2017年2月号 特集=ビットコインとブロックチェーンの思想」に書かれていますので,ぜひ読んでみてください.

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上記のような活動の背景には,彼が暗号通貨を知る以前から開発して発表していた,「自律分散ネットワーク」の思想や作品があります.その最たるものは,2012年にアジアで最大のMediaArt機関のYCAM(山口情報芸術センター)で開催された個展の「OBSERVER N」でしょう.もともとは2008年につくられた作品でしたが,2011年の東日本大震災と原発事故で露呈した中央集権的なシステムの限界を再考することを意図して,ガバナンスや人間観の新しいパラダイムを示すものとして再制作されました.

アーティストで「自律分散ネットワーク」をコンセプトとして扱う者は,いまだに稀です.それどころか暗号通貨が有名になるまでは,それを理解しようとする人でさえアートの世界では稀でした.彼は近年の活動と合わせて,このコンセプトがアートや思想として,適切に議論されるように,社会的な地位を向上させることを目指して活動しています.

OBSERVER N , 2016